【ソウル=細川幸太郎】韓国サムスン電子は10日、テレビ向けの次世代パネルの量産に13兆1000億ウォン(約1兆2000億円)投資すると発表した。韓国内の既存工場の液晶パネル生産ラインを、有機ELより色鮮やかな新型パネル用に転換する。液晶は中国勢の台頭で収益が悪化しており、過当競争の液晶に別れを告げて付加価値の高い独自パネルに成長を託す。
韓国中部の牙山(アサン)市にある主力のパネル生産拠点、湯井(タンジョン)工場に生産設備を導入し2021年をメドに量産を始める。液晶の次とされる有機ELをサムスンが独自に改良した「量子ドット(QD)有機EL」と呼ぶ新型パネルで、自社ブランドの65インチ以上の最上位テレビに搭載する計画だ。
湯井工場は2000年代にサムスンがソニーと合弁でテレビ向け液晶パネルを量産した主力拠点だ。サムスンは同工場で技術を蓄積し、液晶テレビで世界首位に上り詰める原動力となった。ただ足元では液晶パネルの収益力が低下したため生産量を絞っていた。自社テレビに搭載する液晶パネルでも過半数を中国メーカーなど外部企業からの調達に切り替えている。
液晶パネルの分野では、京東方科技集団(BOE)など中国勢が政府の巨額の補助金を活用して液晶パネル工場を次々と建設した影響で供給過剰が続く。テレビ向けでシェア首位の韓国LGディスプレー、スマートフォン向けで首位のジャパンディスプレイ(JDI)がともに大幅な赤字で「もはや誰も利益を得られない」(パネル大手幹部)状態だ。
ライバルのLGグループは有機ELを次世代テレビと位置付けていち早く有機ELパネルの量産投資に動き出した。サムスンはスマホ向けの有機ELパネルでは高いシェアを持つが、生産方式の違いからテレビ向けの有機ELは量産できていなかった。LGの有機ELテレビに対抗するためにも「QD有機EL」という独自パネルの開発・量産が不可欠だった。
ただ液晶から有機ELへと転換を進めるのは中国勢も同じだ。工場1カ所の建設費用が5000億円以上とされる有機ELは日本や台湾メーカーが投資競争から事実上脱落しており、今後は韓国勢と中国勢の頂上決戦が始まる。政府の補助金を使って巨額投資を続ける中国勢に対して、サムスンが次世代パネルで技術力で優位を保てるかは不透明な情勢だ。
2019/10/10 13:15
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引用元: http://egg.5ch.net/test/read.cgi/bizplus/1570682089/