物理的なSIMカードを差し替えることなく、通信に必要な情報(プロファイル)をオンライン上で書き込める「eSIM」が、日本でも注目を集めている。「iPhone XS」以降のiPhoneがこのeSIMをサポートしたことで、対応機種が拡大。「iPhone XS/XS Max」「iPhone XR」と「iPhone 11」シリーズは、物理SIMとeSIMの「デュアルSIM」に対応しており、1台で2回線を切り替えて利用できる。
ただし、日本ではまだeSIMのサービスが広がっているとはいえない状況だ。ドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3キャリアは、Apple Watchのセルラーモデル、ドコモはスマートフォンの子機として使える「ワンナンバーサービス」に向けたeSIMサービスを提供しているが、いずれもスマホの電話番号を共用するもの。KDDIは2019年4月からiPhone向けにeSIMサービスを提供しているが、利用できるのは海外のみ。このように限定的なサービスは増えつつあるが、3キャリアとも、国内でスマホ単独で使えるeSIMサービスはいまだ提供していない。
ここに風穴を開けたのがIIJ(インターネットイニシアティブ)だ。同社は2019年7月に、β版という形でeSIMサービスを開始。これは同社がフルMVNOとして、SIMの発行が可能なHLR/HSS(加入者管理機能)を持つことで実現した。ただしフルMVNOで運用できるのはデータ通信のみのため、現在のところeSIMでは音声通話は利用できない。
eSIMは手軽に契約できるため、仮に大手キャリアが導入すると、ユーザーが簡単に流出するというリスクが考えられる。そのためか、大手キャリアはeSIMの導入については慎重な姿勢を続けている。実際、2018年9月にeSIM対応のiPhone XS/XS Maxが発表されたときに、3キャリアの中ではソフトバンクのみが「eSIMの対応を予定している」とコメントしていたが、あれから1年以上たった今でも、eSIMのeの字も聞こえてこない状況だ。
総務省が定期的に実施している有識者会議「モバイル市場における競争環境に関する研究会」では、5G時代におけるネットワークの課題についても議論を重ねている。9月17日に開催した第17回の研究会では、そのトピックの1つであるeSIMについての考えを、3キャリアの担当者が述べた。
NTTドコモは、「(eSIMの利用に必要な)プロファイルには、顧客の機密情報が入っており、漏えいするとクローンSIMの作成が可能になるなど、セキュリティ上の重大リスクが存在している」との理由から、「慎重な対応が必要」とした。
また、HLR/HSSを保有するMVNOはIIJだけにとどまらず、他の複数事業者からの申し込みも承諾したことから、「時期は言えないが、2019年内にもHLR/HSS連携機能を持ったフルMVNOが出てくる予定」だという。
あくまでMVNOが創意工夫をすることで、eSIMのサービスは十分提供できると考えているようだ。懸念されるセキュリティについては「ドコモが監視する体制でやる」ことで担保する考え。(であれば、ドコモが単独でeSIMサービスを提供しても、セキュリティ上は問題ないはずだが……)
KDDIは、プリペイド型データ通信サービスやIoT端末向けなど、限られた用途でeSIMサービスを提供している。MVNOへの開放については、「提供する方向で計画をしており、ご要望を踏まえて検討する」とのこと。
ソフトバンクは、現在のところApple WatchにしかeSIMを提供しておらず、MVNOへの開放も現時点では未定。1年前のコメントとは裏腹に、3キャリアの中では最も消極的なスタンスだと感じられた。
一方、MNO事業に新規参入し、10月の試験サービスを開始した楽天モバイルは、9月20日に開催された第18回の研究会で、「eSIM対応端末のラインアップを拡充する予定」と明言した。同社はeSIMに対応した小型のスマートフォン「Rakuten Mini」を発表しており、自らeSIMサービスも提供する予定。楽天モバイルは全機種SIMロックフリーで販売することも明言している。他社からユーザーを獲得したい同社にとって、他社よりも自由度の高いサービスを提供することは理にかなっている。
ドコモ、KDDI、ソフトバンクについては、対応状況に若干の違いはあるものの、iPhoneをはじめとするスマートフォン向けにeSIMサービスを提供する見込みの薄いことが、改めて浮き彫りになった。
以下ソース
https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/1910/04/news083.html
引用元: http://egg.5ch.net/test/read.cgi/bizplus/1570271304/