2018年8月に米国シリコンバレーで開催された、フラッシュメモリとその応用製品に関する世界最大のイベント「フラッシュメモリサミット(FMS:Flash Memory Summit)」でMKW Venture Consulting, LLCでアナリストをつとめるMark Webb氏が、「Annual Update on Emerging Memories」のタイトルで講演した半導体メモリ技術に関する分析を、シリーズでご紹介している。
なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。
本シリーズの第4回でご説明したように、コンピュータのメモリ/ストレージ階層における次世代メモリの立ち位置は、DRAM階層とNANDフラッシュメモリ階層の間にある。
次世代メモリの「理想と現実」 (1/2) – EE Times Japan
https://eetimes.jp/ee/articles/1904/11/news028.html
メモリ/ストレージ階層の隣接する階層間における遅延時間(レイテンシ)のギャップが、DRAMとNANDフラッシュメモリの間で大きく開いているからだ。遅延時間の違いは約4桁もある。
ギャップが大きいということは、新たな階層を挟む余地がある、ということでもある。NANDフラッシュメモリのストレージであるSSDが登場する以前の時代は、DRAMの次にくるメモリ/ストレージ階層はHDDだった。DRAMとHDDの遅延時間のギャップはさらに大きく、約6桁におよんだ。SSDは、DRAMと次の階層のギャップを約4桁にまで縮め、コンピュータの性能向上に大きく寄与した。
しかしコンピュータにおけるメモリ/ストレージ階層のバランスは、まだ改善の余地が大いに残っている。この改善に寄与するのが、次世代メモリだともいえる。
コンピュータのメモリ/ストレージと遅延時間(レイテンシ)の関係。DRAMとNANDフラッシュメモリのギャップが約4桁と大きい。出典:MKW Venture Consulting, LLC
□最有力候補のメモリ技術3種とその現状
次世代メモリの最有力候補は、3つのメモリ技術に絞られる。相変化メモリ(PCM)、磁気抵抗メモリ(MRAM)、抵抗変化メモリ(ReRAM)である。
相変化メモリ(PCM)は当初、単体のメモリとして128Mビット品が市販されたほか、異なる種類のメモリを混載するマルチチップパッケージとしてカスタム品が製品化された。しかしこれらの製品は、一時期の販売にとどまった。
PCMの復活は3次元クロスポイント構造とともに生じた。IntelとMicron Technologyが共同開発した高速大容量不揮発性メモリ「3D XPointメモリ」である。IntelとMicronはメモリ技術の詳細を公式には明らかにしていない。しかしシリコンダイを分析した調査企業によるレポートから、PCMであることが判明した。現在では「3D XPointメモリ」が、DRAMを超える大容量化に成功した初めての次世代メモリであるとともに、PCM技術の代表的な商業化事例となっている。
磁気抵抗メモリ(MRAM)は、ベンチャー企業によって4Mビットの単体メモリから製品化が始まった。現在では、単体メモリの量産品は256Mビットまで大容量化が進んでいる。さらに最近では、マイクロコントローラーやSoC(System on a Chip)などで従来の埋め込みフラッシュメモリを置き換える、埋め込みMRAMが大手のシリコンファウンダリーによって提供され始めた。
抵抗変化メモリ(ReRAM)は、マイクロコントローラーの埋め込みメモリとして製品化が始まった。小容量の単体メモリも市販されている。また、大手のシリコンファウンダリーが埋め込みReRAMを近く提供するとみられる。
次回以降は、これら3種類の次世代メモリ技術について解説していく予定である。
次世代メモリの最有力候補とその現状。相変化メモリ(PCM)、磁気抵抗メモリ(MRAM)、抵抗変化メモリ(ReRAM)がある。MKW Venture Consulting, LLC
(次回に続く)
⇒「福田昭のストレージ通信」連載バックナンバー一覧
https://eetimes.jp/ee/series/746/
2019年05月22日 10時30分 公開
EE Times Japan
https://eetimes.jp/ee/articles/1905/22/news035.html
引用元: http://egg.5ch.net/test/read.cgi/bizplus/1558675627/