ソフトバンクグループ(SBG)が19日に上場させる国内通信子会社のソフトバンク(SB)の仮条件価格は上限に幅のない日本初「一本値」という異例の形を取った。投資家と企業側の思惑が交錯するなか「配当利回り5%を死守」「できるだけ高く」といった攻防の末、例を見ない決定が下された。
「正直ほっとしました。これで利回り5%を切ったらこれまでのセールストークはなんだったのかと」。連日ソフトバンク株を売りに回っている国内証券の営業員は胸をなで下ろした。
SB株は配当性向85%という日本企業では異例の高い株主還元率が販売の肝だった。「あの有名なソフトバンク株で年間5%配当。これ以上の売り文句はない」。
配当利回りは1株を買った時に何%が配当で戻ってくるかという指標。SB株の内容を説明した目論見書から予想される年間配当金は75円。1株1500円の投資でちょうど5%だ。仮に株価が1600円に上がれば、配当利回りは4.7%弱に低下。「5%」の看板を下ろす必要があった。
通常は上場する企業も既存株主も、売り出し・公開価格は「高ければ高い方が良い」(SBG幹部)。しかし、今回は調達する2.6兆円のうち9割が国内の個人投資家。「5%」のシナリオが崩れる公開価格の上振れは、証券会社としてどうしても避ける必要があった。
配当を狙った個人の需要は強い。「1億円以上の購入が見込める顧客向けの大口枠はすでに完売しました」。都内の個人投資家は証券会社からこう告げられた。
一方で個人と比べて配当を重視しない機関投資家の需要は「ものすごく良好な状況というわけではない」(機関投資家営業)。機関投資家の様子見姿勢が強いのは、個人ほど配当志向が強くない点に加え、株価指標面で割高感もあるためだ。予想PER(株価収益率)ではSB株は17倍で3日時点のNTTドコモ(14倍)やKDDI(10倍)より高い。
政府主導の携帯料金値下げ圧力がかかる中で「仮条件で下方のレンジを示すと下振れてしまう可能性もあったのでは」との声も聞かれる。ある国内運用会社のファンドマネジャーは「IPOに参加せず、落ち着いてから市場で調達する」と話す。
そもそも公開価格を決めるにあたり仮条件の段階で必ず幅を持たせる必要は無い。ただ、例えば1000円で売り出すことを発行主体の企業と証券会社側でおおよそ決まっていてもあえて800~1000円に設定して「レンジの上限で決まった」と、需要の強さを示す事で上場後も買いに勢いを出すアナウンス効果を狙うテクニックだった面もある。
「5%」が欲しい個人。様子見の機関投資家。なるべく高く売り出したいSBG――。目論見書で示した想定価格の1500円から上にも下にも行けないジレンマの中、野村証券の主導する案件チームは「一本値」に落ちついた。この案件は主な国内証券がほぼ全社関与。国内分は野村証券が筆頭で25%を販売する役割を担う。
SBの上場はその規模だけでなく手法面でも初物づくしだ。引受手数料を対面(2.5%)、ネット証券(1.75%)、機関投資家(1.5%)と格差を付けた。対面とネットで差を付けるのも初めて。汗をかいたものにより多く、という発想や個人に売らなければならない事情も見え隠れする。年末間際のメガ・ディールは資本市場の実験場的側面も有している。
仮条件をもとにした需要動向を調査するブックビルディングの期間は7日に終わり、10日に公開価格が決定する。投資家が正式に申し込むのは11~14日だ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38460990T01C18A2000000/
引用元: http://egg.5ch.net/test/read.cgi/bizplus/1543833519/