オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。
退職後も日本経済の研究を続け、日本を救う数々の提言を行ってきた彼は、新刊『日本企業の勝算』で、日本企業が抱える「問題の本質」を徹底的に分析している。
今回は日本企業の「生産性が低い」問題の根源はどこにあるのかを解説してもらった。
「中小企業は日本の宝」という大いなる幻想
国の経済は、「人口増加」と「生産性向上」の2つの要因によって成長します。
これからの日本は人口が急減します。一方で、高齢者は減らないので、社会保障費の負担は変わらずのしかかり続けます。この負担を背負いながら、貧困に陥ることなく生活を維持していくためには、生産性の向上に集中的かつ徹底的に取り組まなくてはいけません。
本来、政府はとっくの昔に、生産性の向上を経済政策の中心に掲げるべきでした。しかし残念ながら、日本ではその必要性がまだ十分に理解されていません。
そもそも国内で行われている議論を聞いていると、「何が生産性を決めるのか」という基本中の基本ですら、日本ではまったく理解されていない印象を強く持ちます。
例えば、「中小企業は日本の宝」「サービス産業の生産性が低いのが、国全体の生産性が低い原因」「サービス業の生産性が低いのは、おもてなしに対価を求めない日本人の国民性が反映している」「大企業による搾取が日本の生産性を低下させている」「長時間の会議やハンコ文化が生産性を下げている」などなど。
国の将来を決める生産性の議論だというのに、まったく科学的な根拠のない俗説的な感情論ばかりです。
国の生産性を決める最大の要因は「産業構造」だ
皆さんは、同じ「先進国」でもなぜ国によって生産性が違うのか、不思議に思ったことはないでしょうか。逆に、日本の生産性がイタリアやスペインとあまり変わらないことをおかしいと感じないでしょうか。
これらの疑問への答えは、次の一言に集約されます。
「生産性」は、その国の経営資源を、どのような産業構造に配分しているかを測る尺度である。
これがすべてです。これは経済学の基本でもあります。
例えば、2つの国に3000人の労働者がいると仮定します。A国では3社に1000人ずつの労働者を分配し、B国では1社に1000人、ほかの2000人を2人ずつ1000社に分配するとします。
この場合、人材の質、社会インフラの質、技術力がまったく同じだとしても、A国のほうがB国より明らかに生産性が高くなります。企業の規模が大きくなれば生産性が上がって、小さくなれば下がるという鉄則ははるか昔から言われている事実だからです。
先進国の統計を見ると、労働者が大企業と中堅企業に集中的に分配されている国のほうが、産業構造が強固で生産性が高いことが確認できます。逆に、中堅企業と小規模事業者を中心に労働者が分配されている産業構造を持った国は、経済基盤が弱く、生産性も低いのです。ちなみに、発展途上国では、ごく一部の大企業と大多数の小規模事業者に労働者が分配されています。
このような傾向が顕著に見られるのは、経済学で言う「規模の経済」が機能しているからです。
どの国でも、企業の規模が大きいほど余裕ができるので、研究開発が進み、イノベーションが生まれます。また、それぞれの労働者が自分の専門性を発揮しやすいので、生産性の向上に貢献しやすくなるのです。
日本に限らず、海外のどの国のデータを見ても、小規模事業者より中堅企業のほうが生産性は高く、中堅企業より大企業のほうが生産性が高いことを確認できます。
大企業の生産性>中堅企業の生産性>小規模事業者の生産性
これは世界中で確認できる、動かしがたい事実なのです。
統計学的には十分とは言えませんが、日本の中小企業庁が発表している2019年の『中小企業白書』のデータでも、同様の傾向をハッキリと見て取ることができます。2016年の日本の大企業の生産性が826万円だったのに対し、中堅企業は456万円でした。小規模事業者の生産性はさらに低く、342万円でした。
「国の宝」なのは中小企業ではなく大企業・中堅企業
以下ソース
https://toyokeizai.net/articles/-/339534
引用元: http://egg.5ch.net/test/read.cgi/bizplus/1585304656/