QRコード決済が注目される日本のキャッシュレスだが、非現金化が浸透した欧米の主流はデビットカードだ。クレジットカード同様に使えるが、利用代金を「借金」にしないで済む点が好まれる。ところが、日本ではほとんど浸透しない。なぜ“ガラパゴス”なのか。【毎日新聞経済プレミア・渡辺精一】
◇米国ではクレジットの2倍
デビットは金融機関のサービスで、利用者の購入代金を預金口座の残高から即時に引き落とす仕組みだ。その場で決済できるため、欧米では日常の少額決済に浸透している。高額品の分割払いのクレジットと使い分ける傾向がある。サービス提供側にとっても、金融機関間の決済インフラを利用できるため、コストが安いというメリットがある。
米連邦準備制度理事会(FRB)によると、2015年に米国で最も利用されたキャッシュレスは、デビットの695億件で、クレジット338億件の倍以上。日本クレジット協会によると、17年の個人消費に占めるデビットの利用比率はイギリス44%、フランス37%などで高く、欧州では決済の主役だ。
これに対し日本はわずか同0.4%とほとんど利用されていない。一方で、国際決済銀行(BIS)の統計では、日本のデビット発行枚数は4.4億枚で、米国3.2億枚も上回る。
◇日本の「二つのデビット」
日本は、デビットを「持っているのに使わない」のはなぜか。
日本のデビットには、日本独自の「Jデビット」と、VISAやJCBなど「国際ブランド」の2種類がある。
Jデビットは、金融機関のキャッシュカードをそのままデビット利用できる仕組み。1999年に国(旧郵政省)主導で始まった。「キャッシュカード=デビットカード」とみなされるため、発行枚数は4億枚以上に及ぶ。BIS統計のカラクリはこれで解ける。
国内56万カ所で使えるが、利用は低迷し、近年は年約4000億円にとどまる。海外やネットでは利用できず、金融機関によっては深夜早朝に使えないのがネック。キャッシュカードと一体であることが逆に災いし利用者がデビット機能に気づきにくく、利用に際しキャッシュカードと同じ暗証番号を入力するのを不安と感じる人もいる。
国際ブランドデビットは06年にVISAが日本での展開を始め、14年にJCBも加わった。このころから発行金融機関が増え、現在約50機関が扱う。
利用枠が預金残高に限られる以外は、ほぼクレジット同様に使える。国内外の加盟店で広く利用でき、ポイント還元や不正利用補償もある。
審査不要で、原則16歳以上なら持つことができる。1日あたりの利用限度額を決めることができ、計画的に買い物できることや、利用時にメール通知があり不正利用に気づきやすいのもメリットだ。
こうした利便性から利用は伸びてはいるものの、日銀によると16年で約5000億円程度にとどまる。少額支払いでは電子マネーと競合していることや、日本は海外に比べクレジットの審査が緩いうえ、手数料不要の「翌月1回払い」が主流で、クレジットよりもデビットを使いたいというニーズが高まりにくいなどの要因があるという。
◇デビットは浮上できるか
キャッシュレスのサービスが増え乱戦模様の日本。今後デビットはどうなるのか。カギは加盟店手数料の動きかもしれない。
国際ブランドデビットの加盟店手数料はクレジットカードと同水準とみられる。金融機関にとっては、利用が増えれば加盟店からの手数料収入が見込めるうえ、非現金化が進めば現金自動受払機(ATM)の運用コストを抑えられる。最近、発行する金融機関が増えたのはこうした要因がある。
だが、近年、欧米のデビットは、店舗の専用端末にタッチするだけの非接触型が主流になってきた。日本でも浸透するには、対応端末などの加盟店が負担するコストが課題になりそうだ。
一方、Jデビットは、全国の金融機関ネットワークを利用できるため、決済コストが安く、加盟店手数料は中小店でも利用代金の2.5%と、クレジットカードに比べ大幅に抑えている。
銀行業界が10月スタートを予定するQRコード決済「バンクペイ」はこのJデビットのシステムを利用する。乱戦のQR決済では後発組ながら、加盟店開拓に低コストをアピールする。長年低迷するJデビットの復権を狙えるか、成り行きが注目される。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190922-00000002-mai-bus_all
引用元: http://egg.5ch.net/test/read.cgi/bizplus/1569136046/