ヤフーがアスクルの岩田彰一郎社長の再任反対という強硬策に出る背景には、インターネット通販市場の競争の激しさがある。国内のネット通販市場は拡大が続く一方、ヤフーはアマゾンジャパン(東京・目黒)と楽天の2強を追う立場だ。フリマアプリのメルカリなど新たな勢力も伸びてくるなかで、ヤフーはアスクルと共同で立ち上げたネット通販「LOHACO(ロハコ)」のテコ入れが急務と判断した。
ヤフーとアスクルが共同で2012年に立ち上げた個人向けネット通販のロハコは苦境が続く。後発サービスのため事業規模が小さく、赤字体質から抜け出せない。19年5月期のロハコ事業の売上高は513億円と前の期に比べ23%伸びたが、営業損益は92億円の赤字だった。
アスクルの主力であるオフィス向け通販の物流網を活用できなかったことも誤算だった。外部の宅配事業者に業務委託することで物流コストが膨らんだ。アマゾンの攻勢も重荷になったほか、17年2月には埼玉県三芳町の物流倉庫で火災が発生したこともある。
ヤフーのネット通販事業は外部の企業に出品してもらう仮想商店街で、直販事業のロハコとは相乗効果も生まれにくかった面もある。協力関係はロハコがヤフーの決済システムを活用するなどにとどまっている。
アスクルにとって売り上げの1割強を占めるロハコ事業の採算改善は急務だ。前期の連結営業損益は45億円の黒字を確保したが、主力のオフィス用品通販の成長は鈍化している。1月からロハコの無料配送の商品購入額を1900円から3240円に引き上げるなど採算改善を図るが、ヤフーはより抜本的な改善策を求めているかたちだ。
一方で、ヤフーは今秋にもソフトバンクグループ傘下のスマートフォン決済「PayPay(ペイペイ)」の名を掲げた新たなネット通販やフリマアプリを立ち上げる計画だ。ソフトバンクとの連携を深めてネット通販をテコ入れするなかで、アスクルとの関係も再構築する必要がある。
ヤフーの19年3月期のグループ全体の電子商取引(EC)の取扱高は2兆3千億円だった。前の期に比べ11%増と成長しているが、ネット通販市場ではアマゾンや楽天の背中は遠い。楽天の国内ECの取扱高は18年12月期で3兆4千億円とヤフーの1.5倍近い。アマゾンは取扱高を公表していないが、ヤフー以上の規模とみられる。
メルカリなど個人間でモノを売買するフリマアプリの台頭もある。ヤフーのアスクルに対する強硬姿勢には、現状のままでは埋没しかねないという危機感がある。
アスクル株は17日に一時前日比13%高の2614円まで急騰し、売買代金は184億円と47倍に膨らんだ。ヤフーによる株式の追加取得や、アスクルが打診する資本提携先の動きが連想されたとみられる。一方で、ヤフー株の終値は0.3%高の329円だった。ネット通販で存在感を高めるための両社の新しい関係が注目される。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47458940X10C19A7TJ2000/
引用元: http://egg.5ch.net/test/read.cgi/bizplus/1563383874/