PRESIDENT Online 2018.5.22
http://president.jp/articles/-/25143
アマゾンが日本の出版流通を激変させつつある。目指すのは、注文品が「確実に」「即届く」という
システムだ。そのために、中間業者の「取次」を通さず、出版社との直接取引を増やしている。
一見、利用者にとっては便利だが、出版流通ジャーナリストの佐伯雄大氏は「アマゾンと対等に
交渉できない小規模出版社は淘汰され、出版の多様性が失われる可能性がある」と指摘する――。
「すぐ入手できない本は扱わない」
アマゾンが出版社との直取引を増やし、出版流通を変えつつある。いまやアマゾンで本を購入すれば
24時間以内に自宅に届けられ、雑誌も発売日に配達されるのが当たり前になっている。
ただし、なかには依然として「注文したのになかなか来ない」という本もある。その原因は既存の出版流通にある。
アマゾンはそう考えたのだろう。「顧客の不満」を解消するためにアマゾンがとったのは、
「すぐ入手できない本は扱わない」というやり方だった。
2017年4月28日、アマゾンは出版取次の日販と各出版社に対して、「バックオーダー」の中止を宣言した。
従来アマゾンでは、自社倉庫にない商品の注文が入ると、まずは日販、なければ同じく大阪屋栗田、
そこにもなければそのほかの取次……と、順番に発注をかけていた。それでも見つからない場合は、
出版社に注文が飛ぶ。これを「バックオーダー」と呼んでいた。
改善されない在庫状況にしびれを切らした
アマゾンは長年、欠品率(検索される書籍が在庫されていない割合)を限りなくゼロに近づけるために
手を打ってきた。メインの取引先である日販とも、アマゾンが必要とする商品を倉庫に多く在庫するなどして、
引当率(注文を受けた書籍の調達可能な割合)のアップに取り組んできた。
だが、「これ以上の改善は見込まれない」と判断し、17年7月からはこのシステムをやめた。今後は、
取次の倉庫に何度か発注をかけても見つからない商品は、もう「仕入れない」ということになる。
結果、そうした商品は、アマゾンでは購入できなくなる。「それが嫌ならば、取次倉庫に自社商品を
きちんと在庫してもらうか、直取引をするかのどちらかだ」とアマゾンは出版社に迫った。
なぜアマゾンは、そんな要求を行ったのか。出版社の数は、国内に3000社以上あると言われている。
その膨大な数の出版社から本を仕入れて、これまた多数の書店に仕分けて配送しているのが取次だ。
取次はEDI(電子取引システム)やファックスなどを使って、自動・手動で数多くの出版社に注文を出す。
ところがこの出版社というのがくせ者で、少人数で経営している事業者が多く、自社在庫を正確に
把握していない社も少なくない。また逆に、きめ細かく管理している出版社では、在庫があっても
出荷を制限する場合がある。
こうした事情により、取次はすべての商品をすぐさま仕入れられない。その上、書籍は商品の性質として
多品種少量生産であり、返品が可能。それゆえに顧客から注文された商品の調達が難しく、こうした点が
出版流通のウイークポイントだった。
(中略)
対等に交渉できない小規模出版社が危険
アマゾンの行動とその成長は、ほとんど良いことずくめに思える。ただ懸念もある。小規模出版社は
この流れで淘汰されてしまう恐れがあるからだ。
出版業界には、メーカーである出版社が書籍の価格を拘束することを法的に認める「再販売価格維持制度
(再販制度)」があり、出版社はこれによって守られてきた。今後再販制度がなくなり、売り手が
販売価格を自由に設定できるようになったとき、小規模出版社がアマゾンとどれだけ交渉できるのかは、
はなはだ疑問である。
(後略。全文は記事元参照。全3ページ)
引用元: http://egg.5ch.net/test/read.cgi/bizplus/1526963729/