銀行業界で、紙で発行する通帳をデジタルにする取り組みが広がりつつある。超低金利によって収益環境が厳しさを増す中、業界全体で年700億円を超える印紙税などが重荷になっていることが背景にある。情報技術(IT)と金融サービスを融合させたフィンテックの発展も、ペーパーレス化を後押ししているようだ。
栃木銀行(本店・宇都宮市)は、家計簿アプリを展開するマネーフォワードが提供するスマートフォンアプリ「かんたん通帳」を3月から提供している。画面デザインを実際の通帳に近くしているほか、機能を入出金や残高の閲覧などに絞り、スマホに慣れていない人でも使いやすくした。ネットバンキングを使っていなくてもキャッシュカードさえ持っていれば利用できる。
みずほ銀行や横浜銀行は、フィンテックベンチャー「マネーツリー」(東京都渋谷区)と連携。スマホアプリで複数の金融機関の口座情報を集約・閲覧できるサービスを提供している。
通帳アプリは、利用者が通帳を持ち歩く必要がなくなるほか、入出金を即時に確認できるのがメリット。銀行側は利点をアピールし、利用者に通帳のデジタルへの移行を促している。
通帳は、作成したり支店に在庫をそろえたりするコストに加え、1冊当たり年200円の印紙税もかかる。国税庁によると、銀行などが2016年度に納めた印紙税は約710億円に上る。年数億円規模の印紙税を納めているという栃木銀行は、「顧客からは、通帳を支店に持ち込まなくても残高などが確認できるようになったと好評だ。まず利便性を提供した上で、将来的にはコスト削減にもつなげたい」(担当者)としている。
通帳の維持費に頭を悩ますのはメガバンクも同様だ。最大手の三菱UFJ銀行の個人口座は約3600万口座あり、印紙税は年70億円規模に上る。顧客に広告メールなどでネット通帳の便利さを訴えて移行を促し、将来的には紙の通帳を希望する顧客に税負担などを手数料の形で転嫁することも検討しているという。
超低金利による貸し出し・運用利益の縮小で、銀行の経営環境は厳しく、各社は事務作業を自動化するなど、コスト削減に力を入れている。口座管理手数料などの導入は「顧客の理解を得られない」(大手行幹部)と及び腰の一方、通帳に関しては「(ネットという)代替手段を提供できるので、手数料新設のハードルは比較的低い」(三菱UFJ銀)と見ており、紙の通帳を減らす動きが加速する可能性がある。【岡大介、宮川裕章】
◇キーワード・銀行のコスト削減策
超低金利や人口減などで経営環境が悪化する中でも収益を確保するため、銀行各社は構造改革による大幅なコスト削減策を相次いで打ち出している。
三井住友フィナンシャルグループ(FG)は、ITを使った事務的作業の自動化や拠点の集約に取り組んでおり、2017年度から3カ年で500億円の経費を削減する計画。みずほFGは、26年度末までにグループ全体で約1・9万人の人員を削減するほか、傘下の銀行、信託、証券の約100拠点を削減することなどで、1000億円台半ばの経費削減を目指している。
三菱UFJFGは、傘下の三菱UFJ銀行で、23年度までに従業員9500人分に相当する業務量30%を削減する方針。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180420-00000120-mai-bus_all
引用元: http://egg.5ch.net/test/read.cgi/bizplus/1524304518/