米アマゾン・ドット・コムがネット通販事業で再び投資のアクセルを踏み込んでいる。翌日配送サービスのために追加で年4000億円規模の物流費を投じる見込み。アマゾンは自前の配送網の拡張を急ぐことで、小売り大手などの攻勢をかわそうとしている。
アマゾンが24日発表した2019年7~9月期の最終利益は前年同期に比べ26%減り、21億3400万ドル(約2300億円)だった。9四半期ぶりの減益となった最大の要因は、会員制サービス「プライム」向けに始めた無料の翌日配送のコストが大きいことだ。
同社は国土が広い米国では、プライム会員向けに2日以内に商品が届く配送サービスを提供しきた。だが競合が翌日配送で先行。「顧客第一」を掲げるアマゾンは19年4月、全米へ広げると宣言していた。
そのころまで市場の関心は最高益がいつまで続くかというものだったが、同社はむしろ、コストのかさむ自前物流網への支出拡大を打ち出した。翌日配送の費用は4~6月で8億ドル、7~9月で10億ドル前後。さらに24日の決算で10~12月に15億ドルへ増えることを明らかにした。このペースなら1年で4000億円を超える。
今まで以上に早く荷物を届けるためには、物流という「リアル」の世界で改めて投資も必要になる。自分たちの判断で動かせて、効率性の高いインフラが必要だ。アマゾンは米UPSや米郵政公社への依存を経営リスクととらえており、徐々に自前配送に切り替えるとみられている。
6月末に米物流大手、フェデックスとの米国内の航空貨物の輸送契約を打ち切った。一方、米ケンタッキー州の空港で、21年の稼働を目指して航空貨物拠点の建設を進めている。アマゾンは貨物専用のリースの航空機を持ち、21年までに70機に増やす計画だ。
倉庫から消費者宅までの「ラストワンマイル」については、商品配達の委託先をサポートする。情報システムやリース車両、制服などを割安に提供して物流基盤の構築を急いでいる。
ブライアン・オルサブスキー最高財務責任者(CFO)は「長期的には物流大手と自社の配送能力を組み合わせることになる」と説明する。米モルガン・スタンレーのラビ・シャンカー氏は「アマゾンが新たな物流業界のプレーヤーとして台頭しつつある」とみる。
翌日配送サービスは売り上げ増加につながっている。7~9月期の全体の売上高の半分を占めた直営ネット通販事業は350億3900万ドル。前年同期に比べ21%増えた。オルサブスキーCFOは「プライム会員は今までよりも支出を増やすようになった」と手応えを語る。
ある証券会社は「歯磨き粉やフロスといった低価格の日用品についても翌日配送無料の対象とすることで、食料品店や薬局からシェアを奪った」とみている。
米調査会社イーマーケッターによると、アマゾンは米ネット通販市場で37.7%(19年)のシェアを持つ。ただ、伸びは鈍っている。米調査会社グローバルデータ・リテールのニール・サンダース氏は「アマゾンは多くの世代を常連客にしたが、その浸透率ゆえにさらなる成長が難しくなっている」と指摘する。
米ウォルマートなどは新興企業の買収などを通じ、ネット通販ビジネスのノウハウを蓄積しつつある。アマゾンは自前物流網の拡大によってライバルの封じ込めを狙う。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51385650V21C19A0TJC000/
引用元: http://egg.5ch.net/test/read.cgi/bizplus/1572001141/