【シリコンバレー=白石武志】米アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は16日、世界中の全従業員を対象とする新型コロナウイルスの定期検査の導入を検討していると明らかにした。ネット通販の需要増に対応するため同社は物流施設や小売店の営業を続けており、従業員らの間で広がる職場感染への不安を和らげるねらいだ。
ベゾス氏が毎年この時期に公表している「株主への手紙」の中で表明した。同氏は手紙の中で「全ての人を定期的に検査できれば、このウイルスとの戦い方に大きな違いが生まれる」と強調。社内の検査体制をつくるため研究者や購買の専門家らからなる専門チームを立ち上げ、最初の試験設備の組み立てに着手したことを明らかにした。
ベゾス氏は「全ての業界にわたるグローバルな規模での定期検査は、人々の安全維持だけでなく、経済を回復させるのにも役立つ」と指摘。同社が従業員向けにグローバルな規模で構築する新型コロナの検査体制やノウハウを、将来的には外部企業にも開放する考えを示唆した。
ただ、事業拡大によってアマゾンが直接雇用する従業員は世界で84万人に達しており、米国だけで59万人超にのぼるという。全従業員の定期検査を実施するには、現在利用できるよりもはるかに巨大な検査能力が必要になる。ベゾス氏は「適切な期間内にどの段階まで到達するかはわからないが、試す価値はある」としている。
アマゾンでは稼働を続ける物流施設などで従業員が新型コロナに感染するケースが増えており、米ニューヨーク市郊外の物流施設では感染確認後も稼働を止めなかった会社側の判断に反発する一部の従業員が3月末にストライキを実施した。
世界各地の保健当局もアマゾン施設内での感染拡大に懸念を強めており、フランスでは今週、アマゾンが裁判所の命令に従って同国内の物流施設を一時閉鎖すると報じられている。
2020/4/17 5:17
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58165350X10C20A4000000/