現在ではコンピュータに付き物のマウスですが、30年以上前には非常に珍しいものでした。今では想像するのも難しいですが、当時はキーボードによるコマンド入力が基本でした。一般消費者に向けてコンピュータを普及させるにあたって、誰もが気軽に操作できるマウスも大きな役割を担いましたが、その方向性を決定づけるのにスティーブ・ジョブズ氏が一役買ったことはあまり知られていません。
コンピュータを一般的なものにするための鍵
電話と同じように、コンピュータが世の中を変える革命的な製品として大衆に受け容れられることを疑わなかったスティーブ・ジョブズ氏ですが、彼がそのための「鍵」の1つと考えていたのがマウスでした。
もともとマウスは1967年の時点で、すでにダグラス・エンゲルバート氏が開発して特許「ディスプレイシステムのためのX-Y位置インジケーター」を取得していました。しかし、1980年代になっても一般的でなかったように、市場で製品化される機運は高まりませんでした。マウスでクリックではなく、テキストでコマンドを入力するのが一般的だったのです。
スティーブ・ジョブズ氏がマウスと最初に出会ったのは1979年、技術提供を受けるために訪れたXeroxでのことでした。 グラフィカルユーザインタフェース(GUI)をベースにクリック、ポイント、スクロールがマウスで可能なことにジョブス氏は大きく驚いたそうです。
Xeroxのマウスを大幅改良
しかし、驚いただけで終わらないのがスティーブ・ジョブズ氏です。
彼はXeroxのマウスが300ドル(約36,000円)で、ボタンが3つ、スムーズに動かすことができないことに不満げだったそうで、2度目にXeroxを訪れた後、地元のデザイン企業IDEOにその足で出向き「15ドルで1つのボタンのマウスを作ってくれ」と単刀直入に要求したそうです。
1983年にAppleがリリースした、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)とマウスを搭載した最初のパーソナルコンピュータ「Lisa」は、まさにこの「1つのボタンのマウス」を搭載していました。
開発に1億5,000万ドル(約165億円)を要したこともあってか、1台あたり10,000ドル(約110万円)という値のLisaは、残念ながら商業的には大失敗に終わりましたが、まさにこの時マウスの方向性が決定づけられたと言っても過言ではないでしょう。
続けて1984年に発売されたMacintoshは、同じくマウスを兼ね備えていながら2,500ドル(約26万円)でした。その甲斐あってか、マウスを搭載したコンピュータとしては当時、初めて商業的に成功したモデルとなったのです。
シャツに穴が空いていたなら
「もし君のシャツに穴が空いていることを伝えたい時、こういう風には言わないだろう。襟から14センチ下、ボタンの左3センチに穴がある」とスティーブ・ジョブズ氏は当時、雑誌Playboyのインタビューに答えています。「穴があったら、『そこだ!』と指で示すはずだ」
ジョブズ氏らしい、マウスの革新性を示すうまい例えですが、同時にマウスがいかにユーザーにとって便利な存在かをよく表しています。
なお、Lisaとマウスの関係を示した作品としては、ダニー・ボイル監督による映画「スティーブ・ジョブズ」がありますが、同作品では、小学生低学年の“リサ”がマウスを使ってビットマップでイラストを描いたことが象徴的なシーンとして用いられています。
https://iphone-mania.jp/news-213052/
引用元: http://egg.5ch.net/test/read.cgi/bizplus/1527228219/