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今回、悪質と名指しされた3サイトの中でも、特に漫画村による被害は甚大です。いまや若い世代は、電子書籍は買うものではなく、漫画村で読むものだという文化まで定着しつつあります。現在、出版業界は紙の出版物の売上が長期的な減少傾向にあるなか、電子書籍の売上増になんとか将来の望みをつないでいる状態です。まだ、紙の書籍の売上減を埋め合わせるほどではありませんが、電子書籍の売上はこれまで、毎年、着実に増加してきました。この売上の増加ペースが昨年の8月以降、多くの電子書籍サイトで急減しています。特に電子書籍の中でも電子コミックについては前月比で減少するようにまでなってきました。
紙の出版物から電子へと移行するどころか、まだ、充分に成長していない電子書籍の市場まで壊滅しつつあるのです。
特に若い世代では、電子書籍を買わないどころか、ただでネットで読めるのに紙のマンガをなぜ買わないといけないのかという認識まで広がりつつあります。この世代はまだ購買力の低いひとたちが中心ですが、10年後、20年後、いま書籍を買っていただいている年齢層まで次第に成長していくことを考えれば、出版業界は非常に危機的な状況であるといえるでしょう。
出版社側の立場としてここまで書いてきましたが、海外の違法サイトに対してブロッキングが唯一、有効な対抗手段だという指摘は、じつは出版社である現KADOKAWAとドワンゴが経営統合する以前から、私が唱えている持論です。
なぜブロッキングが、海外の違法サイトに対して唯一、有効な手段かというと、海外に置かれているサーバーに対して、日本の公権力を具体的に行使する手段がないからです。海外におかれているサーバーが日本人向けのサービスをやっている場合は日本の法律が及ぶし、日本でも裁判ができるという考え方はわりと最近は一般的なものになってきました。ただ、判決に強制力が伴わないので、たとえ日本の裁判に勝ったからサーバーを止めろといっても相手が従わなかったら終わりです。結局、現地で裁判をおこすしかありません。日本人向けの違法サイトをわざわざ海外のサーバーにおく業者は、日本人が裁判をおこすのが難しい、あるいは現地政府の強制執行力もあまり期待できない国をわざわざ選びますから、非常にやっかいです。
現実問題として、海外の悪質な、確信犯的に運営されている違法サイトに対しては、ブロッキングしか対抗手段が原理的にありえないということは強調したいと思います。そしてインターネット業界がこのことを分かっているはずなのに回避手段があるからと曖昧に誤魔化していることは、欺瞞であるとさえ思います。
実はブロッキングに対してインターネット業界から出ている批判は一点で、ブロッキングには回避手段があるから実効性に欠けるということだけです。では、別にブロッキング以外の技術的な解決策はあるのかというと、だれも答えられません。インターネット以外の別の方法で、という主張になるのでしょうが、さきほど説明したとおり、日本の法律と強制力が及ばない海外において、どういう手段があるのでしょうか? 要するにすべて現地で裁判をおこせ、ということになりますが、裁判が時間切れで役に立たない手法はすでにCDNと防弾サーバーという組みあわせで実現しています。CDNとは、世界中に配置されたサーバーを使ってコンテンツを配信するサービスです。また、防弾サーバーとは、誰が運営しているかわからないように匿名化されているサーバーを指します。漫画村をはじめとする違法サイトはこの2つを利用して運営者の身元の特定ができないようにしており、海外で裁判を起こしても被告の特定だけで膨大な時間がかかり、その間にIPアドレスのログの保存期間が切れるので追跡不可能になります。そして裁判の間もずっと被害は拡大し続けるのです。
結局、回避手段があるとしても、根本的に有効な方法はブロッキングしかありません。
http://ch.nicovideo.jp/kawango/blomaga/ar1496563
引用元: http://egg.5ch.net/test/read.cgi/bizplus/1524573355/