東京都世田谷区では、4月12日から高齢者への新型コロナウイルスワクチンの接種が始まった。ワクチンの移送を巡り、厚生労働省は接種場所を増やしたいのか、解凍後のワクチンを2~8度で冷蔵移送するための保冷バッグを各地方自治体に配布したが、製造元のファイザーは冷蔵移送を推奨せず、困惑している自治体は多いのではないか。
ファイザーのワクチンは人工的につくった遺伝物質メッセンジャーRNA(mRNA)を薄い脂膜でくるんでいるため、揺れや震動に弱く、壊れやすいといわれている。
世田谷区は専門家の意見を踏まえ、零下75度以下の超低温冷凍で運ばれてくるワクチンの扱いには細心の注意が必要なので、大きな会場での集団接種を基本とした態勢を準備することにした。
ところが、厚労省は1月29日、ワクチンを小分けにして診療所で個別接種する「練馬モデル」を先進的な取り組みとして発表した。保冷バッグに入れ、当初は車やバイクで移送するというもので大きな反響があったが、バイクはその後、さすがに不可とした。
これに対し、ファイザーが3月8日時点の情報として、ホームページ(HP)に載せた「ワクチンの取り扱い」では、小分け移送するときは、零下90~60度か零下25~15度の「冷凍が原則」との見解を示した。
厚労省は3月12日に開いた第4回自治体説明会で「冷蔵(移送)は不可なのか」とただされると「冷蔵は容認されているが、揺れを減らすような慎重な取り扱いが求められる。冷凍した場合はより安定した管理が可能」と迷走していく。
厚労省は世田谷区の問い合わせには「小分け移送はあくまで自治体の責任で行われるもので、厚労省が責任を負うものではない」と回答した。
ファイザーは3月28日時点の情報として、HPから「冷凍が原則」との記載を消す一方で「(冷蔵移送の場合)衝撃、振動を避けること」と明確に記述した。振動も衝撃もなく、車で運ぶのは困難だろう。
世田谷区がファイザーに確認してみると「冷蔵移送は避けてほしい。品質保持の観点から推奨しない」とのことだった。
厚労省は既に6億8200万円もかけて、医療資材メーカーのスギヤマゲン(東京)に冷蔵移送用の保冷バッグを4万個発注し、自治体に配布しているので、方針転換をためらっているのかもしれないが、ワクチンは原則として冷凍移送とすべきだ。モデルとされた練馬区も、零下25~15度の冷凍で移送すると決めたと聞いている。
https://www.47news.jp/news/column/47opinion/6196797.html
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