[ロサンゼルス 11日 ロイター] – スーパーヒーローや怪物、宇宙人が闘いを繰り広げる巨大スクリーンの裏側で、現実のバトルがぼっ発している。その結果は、全米各地の映画館で今後どの作品が上映されるのかを左右する。
これは新作映画がDVDになって発売されたり、ネット上で配信される前に、劇場でどのくらいの期間上映すべきかを巡る戦いだ。今の先行期間は90日が平均だが、メディア業界の地殻変動により、それを短縮すべきかどうかを巡る論争が過熱している。
新興の大きなテクノロジー企業が、長年続いたハリウッドの伝統をひっくり返しかねないこの論争には、地域の映画館やテレビの娯楽番組の将来がかかっている。
動画配信サービス大手ネットフリックス(NFLX.O)は、独自の新作映画を劇場で封切るのと同時、あるいはわずか数週間程度の時間差でネットに配信している。ライバルのアマゾン・ドット・コム(AMZN.O)の制作子会社アマゾン・スタジオズは、オリジナル作品の一部について、劇場先行期間を2─8週間程度とし、その後は動画配信サービス「プライム・ビデオ」で流したいとの考えを示している。
映画館のオーナーの多くは、業績悪化につながるとして反対。アカデミー賞の主催団体は対応を検討中で、有名人も賛否を口にし始めた。
世界最大の映画館運営会社AMCエンターテインメント・ホールディングス(AMC.N)のアダム・アーロン最高経営責任者(CEO)は、「すべての、そしていかなる選択肢も検討する」とする一方、現行の業界基準に変更を加える際は「われわれにとって有益、またはニュートラルでなければならない」と述べている。
娯楽大手ウォルト・ディズニー(DIS.N)ですら、ネット配信事業への参入を表明しており、11日に料金などの詳細を発表。これにより、同社もより早期の配信解禁を求めるようになるのではないかとの懸念が出ている。
ディズニーの幹部は、注目映画については相応の時間差をつける現行のやり方を断固として支持するとしている。同社のスーパーヒーロー映画「ブラックパンサー」や「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」は2018年、計73億ドル(約8100億円)の興行収入を上げた。
さきごろ映画館の経営者がラスベガスで開いた会議で、ディズニーを始めとした制作側は、暗い劇場で映画を見ることは特別な体験だと強調した。
「映画館でファーストキスを経験した人の数は、実家のリビングよりもずっと多い」と、通信大手AT&T(T.N)傘下ワーナーメディアの映画会社ワーナー・ブラザーズのトビー・エマーリッチ氏は話す。ワーナーメディアはネット配信も強化する方針だ。
アカデミー賞受賞の英女優ヘレン・ミレンさんは、もっとストレートだった。
「ネットフリックスは大好きだが、ネットフリックスなどクソくらえだ」と述べて喝采を浴び、「映画館に座って、暗くなっていく瞬間に勝るものなどない」と語った。
ネットフリックスは、ハリウッド中心部にある1922年開業の歴史ある映画館「エジプシャン・シアター」の買収交渉を進めていると、事情に詳しい関係者は明かす。新作の封切や、他のイベントをこの劇場で開く考えだという。
アマゾン・スタジオズのジェニファー・ソルキーCEOは、「映画館での体験を重視している」と発言。同社は6月にコメディー映画「レイト・ナイト」を公開するが、従来どおりの先行期間を設けるつもりだという。
先行上映の期間が短くなれば、映画館に足を運ばない人が出てくると、全米4位の映画館運営会社を傘下に持つマーカス(MCS.N)のオーナー、グレグ・マーカス氏は言う。
「顧客の10%を奪われて事業に打撃を受けたら、われわれは劇場体験に再投資できなくなる」と、マーカス氏は予測する。「そうなれば、最終的にはコンテンツ提供者も痛手を被る」
コンテンツを消費する側は現状に満足している、と話す人もいる。ネットフリックスが90本あまりの映画をネット配信する中で、2018年の興行収入は世界で過去最高の410億ドルに、米国とカナダでは計120億ドルに達した。
「(現状が)機能していないという訳ではない」と、配給会社ビュー・インターナショナルのティム・リチャーズCEOは言う。
以下ソース
https://jp.reuters.com/article/film-theaters-idJPKCN1RO0KJ
引用元: http://egg.5ch.net/test/read.cgi/bizplus/1555255662/