「ブロッキングの検討、白紙に戻すべき」 Cloudflareによる「漫画村」運営者情報開示受けJILISが意見書 – ITmedia NEWS
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2018年10月12日 07時49分 公開
「前提事実に重大な誤認があったことが判明したことから、ブロッキングについての検討はいったん白紙に戻すべき」――情報法制研究所(JILIS、理事長:鈴木正朝・新潟大学法学部教授)は10月11日、海賊版サイト対策について議論している政府の検討会議(タスクフォース)でブロッキング法制化が検討されていることについての意見書(PDF)を公表した。
政府は「海賊版サイトの運営者は特定が困難」としてタスクフォースを設置したが、海賊版漫画サイト「漫画村」が利用していたCDN・Cloudflareが6月、漫画村の運営者情報を開示していたことが判明したため、タスクフォースの前提が崩れたと指摘し、ブロッキングについては再検討が必要としている。
また、Cloudflareへの情報開示の手続きを行った山口貴士弁護士の意見書も公開(PDF)。手続きのスキームを明かした上で、「CDNを利用している海賊版サイトの運営者の特定は可能」なため、ブロッキングは刑法上の「緊急避難」には当たらず、ブロッキングの立法する根拠となる立法事実も「存在しない」としている。
「運営管理者の特定が困難」との前提だったが……
海賊版サイト対策をめぐっては、政府の知的財産戦略本部が4月、「漫画村」をはじめとする3サイトについて「ブロッキングを行うことが適当」との緊急対策を表明。6月には、有識者による「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議(タスクフォース)」を設置し、対策を議論してきた。タスクフォースは9月、中間とりまとめ案(PDF)をまとめたが、ブロッキングについて賛否両論が併記される形で、「なお拙速な法制化に含みが持たされている」とJILISは指摘する。
そもそも、タスクフォースの設置の目的として政府は、海賊版サイトについて、「運営管理者の特定が困難で、侵害コンテンツの削除要請すらできない」としていた。だが、山口弁護士らがCloudflareに対して6月、漫画村の運営者情報開示請求を行い、運営者とみられる個人を特定したことが10月に判明。手続きにかかったのは訴訟提起から17日間で、採った手段も一般的なものであったことから、「被害に気付いた時点で実施していれば、出版社は多大な被害を負う前に対処が可能だったと考えられる」とJILISは指摘する。
Cloudflare、漫画村運営者の氏名・住所など開示 手続きにかかったのは17日
(中略)
ブロッキングは憲法違反の可能性
また、緊急対策発表時の資料で政府は、漫画村による出版社の被害は約3000億円と推計していたが、JILISが行った情報公開請求で得られた資料によると、「大手出版社A社の被害は直近年度で数十億円以上、大手電子書店のB、C社はそれぞれ総額20億円以上」だったという。また、推計は「SimilarWeb」の統計データを基に行われたが、SimilarWebは正確さについて疑問視されているため、「実際の被害額はここまででなかった可能性が極めて高い」としている。
さらに、タスクフォースの議論では、「ブロッキングが世界42カ国で導入されている」とあったが、JILISによると、うち少なくとも15カ国では15年間実績がないという。
このため、「タスクフォースの議論のうち、少なくともブロッキングに関するものは、前提となる事実を見直した上で、再検討が必要」とJILISは指摘。CDNへの情報開示請求による運営者の特定など、ほかの手段があるにも関わらず、ブロッキングを行うと、「通信の秘密の立法による制約が憲法違反と評価されることに注意する必要がある」とする。
このため、ブロッキングについての検討はいったん白紙に戻した上で、海賊版対策として、リーチサイトの違法化や電子出版のダウンロード違法化のための立法の検討や、民事訴訟法・プロバイダ責任制限法の改正の検討、著作権者、出版社、通信事業者などの情報交換・意見共有の枠組み作りの検討を行うことなどを、JILISは求めている。
(全文はソース)
引用元: http://asahi.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1539411209/