現代ビジネス 2018.05.19
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55710
ブロックチェーンの価値とは
筆者は最近、マサチューセッツ工科大学(MIT)の「デジタル通貨イニシアチブ」でシニアアドバイザーを
務めるマイケル・ケーシー氏に、よく「ビットコインは実のところ価値がない」という意見が出ることについて、
どう考えているのかとたずねた。
彼の答えは、シンプルだが明快だった。「ビットコインの価値は、シャットダウンできないことにあります」。
ビットコインをシャットダウン(強制終了、ここではシステム全体を止めてしまうこと)できない理由は、
すでに周知のことではあるが、取引がブロックチェーンという分散型台帳に記録されているからだ。
ブロックチェーンは誰もがチェックすることが可能だが、誰もコントロールはできない。つまり、
誰にも気づかれることなくブロックチェーンを改ざんすることはできないのだ。ブロックチェーンが
登場してから10年、これまで一度もハッキングされたことがないのは、そんな理由からだ。
ケーシー氏は、この仕組みが世界を変えてしまうと指摘する。「長年、情報を編集する権能は、支配者たちが
牛耳っていました」とケーシー氏はいう。今ではビットコインのおかげで、「私たちは初めて、一見して
改変不能な歴史の記録法を手にしたのです」。
しかし、それはどんな場合も「善」だと言えるのだろうか。
「不変性」という概念は、ブロックチェーン神話の根幹にあり、ポジティブなものとして評価されることが多い。
ブロックチェーン関連のカンファレンスに行けば、「変化しない」(immutable)という言葉は、「エコシステム」
という単語と同じくらい、あちこちで飛び交っている。
ジャーナリズムから人道支援、サプライチェーンまで、すべてにおいて不変性を保証するためにブロックチェーンを
使おうとする組織もある。さらにブロックチェーンの不変性は政治分野にも波及している。先月、
中国の活動家たちが、削除できないイーサリアムのブロックチェーンを使って、反体制的なメモを掲載し、
検閲に楯突こうとした。
(中略)
ブロックチェーンは善人だけに利益をもたらすのか?
『The Truth Machine』は、ブロックチェーンの未来について肯定的なビジョンを見せてくれる。両著者が、
この技術を心から認めていることには疑いの余地はない。しかし同著が他書と一線を画しているのは、
著者らがブロックチェーンで賞賛される「不変性」について、その影の部分にも迫っていることだ。
現状では、ブロックチェーンには行き過ぎた誇張がなされ、善意ある人たちだけがこのテクノロジーの恩恵を
得るという印象を与えている面がある。だが実際には、そうではない。
どうすれば、力のある悪質な何者かが、中傷や悪態を不変化するためにブロックチェーンを利用することを
防げるだろうか? ブロックチェーンは「真実」を伝える手段だと広く説明されているなかにあっても、
フェイクニュースへの対抗手段になり得ないのはなぜなのか?
ブロックチェーンが諸刃の剣であることは、登記の問題からも見ることができる、と同著は指摘する。
「登記をいちから作らなければならない貧しい国々では、住民の所有権を認証する役割にある政府高官が
腐敗していて、最初から嘘の情報をブロックチェーンの登記システムに書き込む恐れがある」。また、
「ガーベッジ・イン/ガーベッジ・アウト」(誤ったデータを入力すれば、誤った答えしか出てこない)
という問題もある。ブロックチェーンに、信頼性の低い元データを入力すれば、問題はさらに深刻化するのだ。
「多くの途上国では、何世紀にもわたって滅茶苦茶な記録が蓄積されてきた。そうした情報を永久的な
不変性のあるブロックチェーンの記録に急いで入力するとなると、他に被害が及ぶような権力者の主張や
汚職を正当化し、正式なものにしてしまうという懸念がある」と、同著は指摘する。賄賂のような
犯罪行為があったかどうかを、ブロックチェーンでは知ることができない。ブロックチェーンができるのは、
「揉めごとになったとき、汚職役人に対抗する証拠として使い得る、反論の余地がないアクティビティの
パターンを明らかにすること」だ。
(後略。続きは記事元参照。全2ページ)
引用元: http://egg.5ch.net/test/read.cgi/bizplus/1526778550/