日本経済新聞 2018/4/19 23:00
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2959555019042018TJ2000/
あらゆるモノがネットにつながる「IoT」分野で、「工場の基本ソフト(OS)」の覇権争いが
激しくなっている。主役が三菱電機とファナックだ。設備をネットワークでつなぎ工場の生産性を
高める仕組みを開発し、企業に参加を呼びかけている。同分野で先行する独シーメンスなどの欧米勢に
割って入り日本発の世界標準を狙う。
三菱電機は19日、工場の機械の監視や生産性向上に使うソフトウエアや機器を発売すると発表した。
三菱電機や日立製作所などからなるコンソーシアムが5月8日に発売するIoT基盤「エッジクロス」に
対応する第1弾の製品となる。
設備をつないでムダな動きや異常をリアルタイムで検知し、工場全体を効率的に動かすのがこの基盤の狙い。
プラットフォームを握れば得られるデータが増え、ハードの競争力にも直結するため仲間作りが活発になっている。
IoT基盤では独シーメンスや米ゼネラル・エレクトリック(GE)が先行する。海外勢が主にクラウド上で
情報を処理するのに対し、エッジクロスは「エッジ(末端)コンピューティング」を特徴とする。
外部のクラウドにデータを集めるのではなく、工場で得た情報をその場で素早く処理するもの。
クラウドにデータを送っていては複数の機械を効率的に動かすには間に合わないためだ。
エッジでは機械をより緻密に制御できるため、ロボットや自動化装置で競争力のある日本企業に
向くとされている。三菱電機FAシステム事業本部の三条寛和機器事業部長は「現場の課題は現場で
改善するのが我々のポリシー」と胸を張る。
エッジクロスの会員企業は約130社。三菱電機名古屋製作所の都築貴之FAシステム統括部長は
「参画する企業を増やしたい」と拡大を目指すが、強力なライバルが存在する。
産業用ロボットなどで高いシェアを持つファナックだ。同社は米シスコシステムズや人工知能(AI)
ベンチャーのプリファードネットワークス(東京・千代田)などと開発した「フィールドシステム」の普及を進める。
こちらも「エッジ」が特徴で、昨年10月の投入以来、パートナー企業数は約470社に達した。
ファナックの武器はAIだ。米半導体大手エヌビディアの画像処理半導体(GPU)を活用し、
ロボットが自ら学ぶ機能を追加した。
バラバラに積み上がった部品をつかむ場合、従来は人間がプログラムを入力する必要があった。
新システムではロボがつかみ方を自ら学ぶ。
両陣営はそろって「オープン」を強調するが、連携が実現する兆しはない。「ファナックのシステムは
特定の機械向けの傾向がある」(三菱電機の宮田芳和常務執行役)。「我々はサポートがワンストップで
提供できる」(ファナックの松原俊介専務執行役員)。工作機械の数値制御(NC)装置でのライバル関係が
色濃く残る。
そのため多くの機械メーカーが両陣営に加わる状況だ。シチズンマシナリー幹部は「覇権争いがどうなるのか
分からないので必要な協業は全てしておく」と打ち明ける。
両陣営とも当面は国内で仲間作りを進め海外に打って出る計算だ。2陣営のまま世界基準を狙うのか。
それともどこかで連携するのか。主導権争いは続きそうだ。
(増田有莉、井沢真志)
引用元: http://egg.5ch.net/test/read.cgi/bizplus/1524261680/